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5月5日

昨日は5月5日 こどもの日、ですが、私にとっては特別な日。

大切な友人の命日です、享年35歳。彼女がいなくなって丸3年になります。

 

動物病院ブログですが、今日は彼女の話を書きます。

 

彼女の病気はとても進行の早いガンでした。

手術をしたのにあっという間に再発し、その後も幾度の手術、抗がん剤、放射線治療と本当に頑張って治療してきましたが、神様は彼女の味方をしてくれませんでした。

 

私は扱う命の対象は違えど医療人です。

いわゆる3大療法が思うように成果が出ない場合、最終的にどうなってしまうのか予測はできました。

私は今の往診診療の中で様々な代替療法を取り入れていますが、そもそもの入口は彼女の力になりたいということからでした。

私は人の医者ではないですし身内でもありませんから、彼女の治療方針に口出しはできません。

ただ、もしも現代医療で打つ手がなくなったとき、それから何かを探しても間に合いませんから、できるだけ様々な知識を仕入れておいて、何か役に立てることがあれば、という思いで調べものを始めました。

末期がんの生還本から始まり、さまざまな代替療法や民間療法の一般書を読みあさりました。

そこで初めて、人の医療では統合医療という分野で、無資格の方が民間療法のレベルで世間から見るといわゆる”怪しい治療”を行っているのではなく、お医者様が自由診療の領域で”統合医療”と呼ばれるジャンルで様々な治療法を組み合わせて治療を行い、成果を上げているということを知りました。

 

彼女の病気が発覚した当時、私はまだ独立しておらず勤務医でした。

私の勤務していた動物病院は、ごくごく普通の1次診療をしている動物病院でした。

私はもともと昔から鍼灸治療には興味があって、院長にお願いして勉強させてもらい、細々と治療に取り入れてきましたが、それ以外の治療については獣医の教科書や専門書に書かれていることが中心で、そこに何の疑問もありませんでしたし、それ以外の治療の選択があるということを考えたこともありませんでした。

 

私が今の治療に頻繁に取り入れているオゾン療法は、実は往診開業当初は名前も知らない治療法で、彼女に役立つ治療を調べているうちに見つけて自分の中で強くヒットした治療法でした。

人では保険適用ではない自由診療の領域の治療はかなり費用がかかります。大学病院で通常の治療を受けていると担当の先生の理解も必要ですし、そのために別の病院に治療に通うよなるとなかなか代替療法を積極的に併用していくのはいろんな意味で難しいものです。

本で調べて良さそうだよと提案するより、実際に自分が使ってみて、イメージしているような効果が本当に出るのであれば、私が彼女に治療できるわけではないですが、彼女に提案するのに説得力がでるのでは、と思ったのでした。なのでそもそもの導入の動機は彼女のため、でした。

安全性も高く、治療対象の幅も広い。器械も大きくなく操作も簡便。

私は往診車で1人で動いていますから、1つの治療法に特化した器械を積んで動くのはスペース的に効率が悪い。本当に狙っているような様々な症例に効果が出るのであれば、自分にとっても強力な治療アイテムになります。

開業して半年弱で、売り上げなんて大したことない時期に、決して安くはない買い物でしたが、もともとピンときた直感力を信じるタイプなのと衝動買いは得意なので(?)。。。

ただ、当時は普通の一般診療の考え方が自分のベースでしたから、”様々な病名で使える治療”は、なんとなく”胡散臭い”と感じていたのも事実で、オゾンの器械の納入の時に『なんかオゾンって、調べれば調べるほど胡散臭いですよね~』と言ってしまい業者さんに苦笑され、その後会うたびに『山口先生はオゾンを買うときに”胡散臭い器械ですよねー”って言ったんですよ~』とからかわれました。

今では何度か発表させていただいたるほどオゾン療法は私にとってはなくてはならない治療のひとつになっているのですが。

 

オゾン療法を入口として代替医療に興味を持ち始めた私は、獣医の統合医療のセミナーを紹介してもらい、そこで初めて、獣医療でも教科書や専門書にはない様々な治療を組み合わせて治療効果を上げている統合医療を実践されている先生方が大勢いるということを知り、衝撃を受けました。

 

実はその彼女は勤務先の動物看護師で、自宅でもペットをたくさん飼っており、ちょうど高齢になって足取りが重くなってきたご自宅の大型犬の鍼灸治療で開業後からは定期的に往診していたものでしたから、そのワンコさんにもオゾンを含めた施術しながら、体調の変化を感じてもらったり、自分が診ている症例で効果が出た子の話をしたり、自分が知識を入れたさまざまな代替療法の話をしたりしました。

 

ようやく彼女がオゾン療法を取り入れてくれたのが2015年3月。

ただ時すでに遅し、幾度の手術と抗がん剤治療で体力の衰えが大きく、3回ほど通われたようでしたが、その後は通院する体力はなくなってしまいました。

 

毎年5月5日を迎えるとき、何か自分の思いを表現しようと思ってパソコンに向かうのですが、うまく書けず途中で破棄していました。

実はこのブログも昨日更新するつもりが、更新するかどうか悩んで1日遅れました。

12月以来、久々のブログ更新なのですが、実は、ブログを書けなくなっていたんですよね。

ごくごく普通の1次診療を何の疑問も感じず獣医師としてに十数年。往診診療を始めてもうすぐ4年。そんな中で代替療法を取り入れて3年半。

ドッグフードは万能食だと何の疑いもなかったいわゆる普通の獣医師の思考から、栄養のことを勉強して何かおかしいと疑問を持ち始めて2年。

特にここ1年くらいは自分の頭の中での医療というものの考え方への変革が大きく、どうしても現代医療に対して否定的というか、懐疑的になってしまい、何か書いてもとてもネガティブな感じになりそうだったんですよね。

もちろん、現代医療の恩恵は充分理解していますので、一般診療では通常の治療方法ベースに患者さんに提供しているのは今も変わりません。

獣医療でも高度医療や先進医療が発展していることで助かる命が増えている事実も充分に理解しています。

ただ往診診療は、今でこそ通常の一般診療の患者さんも増えてきましたが、患者さんの層は施設診療とは違い、超高齢だったり、様々な病気の末期の症例が多かったりとかなり独特です。

ご自宅ということや、飼い主様をお話をする時間が長いということもあり、診察台の上では聞くことのなかった飼い主様の本音、要望が聞けたりもします。

なんとなく人医療も獣医療も、進んでいこうとしている方向性や、医療人の考えていることと、患者が求めていることに何かズレがあるような気がしてきています。

なので、獣医療従事者の方にも、いろいろ悩んでいる飼い主様にもお伝えしたい、自分の思いが実は沢山あります。

 

彼女は私の往診診療をとても応援してくれており、もしも私がスタッフを必要とすることがあれば、彼女と一緒に仕事がしたい、と思えるほど私も信頼を寄せていました。

何十年後かに、私が空の上で彼女と再会できることがあれば、彼女に自信をもって、胸を張って自分のしてきた仕事のことを伝えたいと、3年前の葬儀の時に手を合わせてきました。

 

自分のイメージとして、動物病院のブログは飼い主さんにとってエビデンスの整っている有益な情報をお届けすべきかと思っていたので、なんだか自分の持論を唱えたり、エビデンスのはっきりしない情報をお伝えするのはいかがなものかと、更新できていないブログに悶々としていたのですが、ここで心機一転することにしました。

今後は体裁を整えることなく、カッコつけることもなく、『普通の動物のお医者さん』らしからぬ発言も増えるかもしれませんが、自分の病院のブログですし、書きたいように書いてみようかと思っています。

 

この時期は予防関係でお伺いするお宅が多く、なかなかパソコンに向かう時間が取れないのも事実なのですが、今後は、もう少しブログの更新頻度があげられるかな?と思います。

お楽しみに(?)。