ペットが食べるフードについて ④
フードを買うと、パッケージの裏か横に様々な表示があります。
『原材料名』
『保障分析値』
これらから、様々な情報を得ることができます。
以前のブログでもちらっと書きましたけどね。
往診の合間に、ホームセンターに立ち寄り、陳列されているフードからこっそり写真を撮ってきました(買わないのにゴメンナサイ)。
このフードの保障分析値は
たんぱく質 16.5%以上
脂質 12.0%以上
粗繊維 3.5%以下
灰分 6.5%以下
水分 10.0%以下
…リン以下はごく少量のためひとまず割愛。
これらと足し算すると、48.5%です。
では、残りの51.5%は???
答えは炭水化物です。
正確には、水分10%を引いた状態でトータル100に直して考えないといけないのですが、面倒なのでざっくりいきます。
粗繊維も炭水化物の仲間になりますが、私たちが吸収できない食物繊維と考えてください。
腸内環境を整えるためにとても重要な栄養素です。
ちなみに灰分とは、燃やした時にできるゴミと同じ、便となる残渣です。
炭水化物は表示義務がないので、大半のフードの表示はこのようになっています。
すいません、かなり見にくいですが、
保障分析値
たんぱく質 23.0%以上
脂質 10.0%以上
粗繊維 4.5%以下
粗灰分 8.5%以下
水分 10.0%以下
これらを足し算すると56%
炭水化物は44%となります。
つまり、ドライフードの約半分、50%くらいは炭水化物(でんぷん質)です。
ざくっと様々な商品の保証分析値です。
私は分子栄養学の勉強をしている観点から、人の食事において糖質制限を推奨している派です。
糖質制限、、、というより、現代人は炭水化物(糖質)のとりすぎでタンパク質などのほかの栄養素が足りなさすぎ。
麺やお米、パンや菓子でお腹がいっぱいになると満腹になり、タンパク質などの摂取量が絶対的に少ないと思っています。
糖質過剰がいかに怖いことなのかは、とてつもなく長い話になるので、またの機会に書けたらと思います。
人体も動物も体の構成成分である細胞はタンパク質と脂質でできています。(”脂肪”ではありませんよ)。
筋肉も骨も、血液も、ほかの体液も、皮膚も毛も、酵素も、ホルモンも、免疫力アップと言われる免疫細胞も、構成成分はメインがタンパク質。
そして体のタンパク質は摂取したタンパク質からしか作ることができません。
糖質はエネルギー源にしかならず、体内でタンパク質には変換してくれません。
牛などの完全な草食動物は、食べた草をタンパク質に変換しているのではなく、食べた草によって胃腸の中で共存している腸内細菌を育てます。
細菌の構成成分はタンパク質であり、胃腸内で育てた腸内細菌を栄養源として吸収して体を作っています。
犬は雑食に進化を遂げたといっても草食動物ではありませんから、摂取したタンパク質からしか体は作れません。
なのでフード選びの際には、基本的にはタンパク質の含有量が多いものを選んでね、という話をします。
そうすると、一番下の28%のタンパク質を含有しているフードが優良で、一番上の16.5%のフードが粗悪なのか、、という感じになります。
ただ、ここで、タンパク質の”質”が重要になります。
これがフード選びのひとつのキモになると思います。
そこで、今度は原材料名をみます。
原材料は基本的に重量が多いものから順に並んでいます。
これは最初にくるのが
トリ肉(チキン、ターキー)
そして、トウモロコシ、小麦、玄米、米、大麦、オート麦、、、
これは最初に来るのが
穀類(コーングルテンフィード、小麦粉、米ぬか、小麦ふすま、大麦糠、脱脂米糠)
そして
豆類(脱脂大豆、乾燥おから)
肉類(チキンミール、フェザーミール)
最初に来るのが
穀類(トウモロコシ、小麦粉、コーングルテンミール、フスマ、パン粉、コーングルテンフィード等)
そして、肉類(チキンミール、チキンエキス、ビーフパウダー、ササミパウダー等)
最初に来るのが
チキン
そして、家禽ミール(天然グルコサミン源)、
コーングルテンミール、米、シリアルブラン、小麦、オーツ麦
・・・というように、『穀類』である植物性食品がメインになるか、『肉類』である動物性食品がメインになるか、ここにはないですが、『豆類』である植物性食品がメインになるか、フードによって違ってきます。
え、たんぱく質=お肉じゃないの??
違うんです。
タンパク質は、動物性たんぱく質と、植物性たんぱく質があります。
植物性たんぱく質・・というと、『大豆』をイメージしますが、トウモロコシや、小麦などにもタンパク質が含まれています。
スーパーに行ったとき、
鶏肉が100g100円だったとして、1kg買うと1000円です。
小麦粉1kgが250円くらいだったとして、価格が1/4になります。
ちなみに、原材料は『重量の多い順』に並びます。
お肉は水分を多く含んでおり、穀類は基本的に乾いていますので、1番目に穀類、2番目に肉類が来ているフードのお肉の含有量はかなり少なくなると考えられます。
私たちが食べている肉は、100gに20gくらいのタンパク質が含まれます。
え、肉100gのほとんどがたんぱく質じゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、肉はほとんどが水分なので、水分を抜いて考えるとそうなるのです。
なので、私たちが普段目にする『お肉』でタンパク質の量を確保しようと思うと、かなりの肉を使わないといけなくなりますので、コストがかかります。つまりフード代が高くなります。
価格を抑え、なおかつタンパク質量を確保するために、普通の『お肉』を使うのではなく、『〇〇ミール』を使い、『〇〇グルテン』を使って作ることになります。
『〇〇グルテン』の”グルテン”は、穀類に含まれるたんぱく質の成分。
パンを膨らませるのに薄力粉ではなく強力粉のほうがグルテン量が多いので生地がよく伸びて・・・の、あのグルテンです。
『小麦粉』そのものではなく、『グルテン』を使ったほうが、手っ取り早くタンパク量を増やすことができます。
『チキン』と『チキンミール』は違います。
『〇〇ミール』とは、レンダリングといって、人の食用に加工された肉のくずの部分や、人が食べない不可食部位を集めたものです。
なので、価格が安く抑えられます。そしてタンパク量を確保することができます。
レンダリングについては、ネットで検索すると詳しく書かれているサイトが沢山ありますので、気になる方は調べてみてください。
ペットフードが開発された経緯は先回書きましたが、人の食品業界が加工食品として使えなかった、本来であれば廃棄部分を利用してペットフードが作られている所以がこのあたりにみられるわけです。
加工されていてもタンパク質はタンパク質。
お肉から取っても、穀類やグルテンから取っても、タンパク質はタンパク質。
それを良しとするか悪いとするかは、購入する飼い主さんの判断だと思いますが、フードって、こういう風に作られていることを知らない方も多いかと思いますので、メーカーや、パッケージに大きく書かれている文言に惑わされることなくフードを選ぶ判断材料として考えていただければな、と思います。
実は獣医師である私は、数年前まで、こういったラベルの読み方を知らなかったのです。
私が不勉強であると言われればそれまでですが、実はこういったことを知らない、というか気にしない獣医師はとても多いはず、です。
自分も獣医の専門誌は定期購読していますし、病気についての専門書だってそれなりに読んできていたつもりです。
でも、病気の検査・治療法や新薬の情報は、いろんな獣医の雑誌で最新情報が特集されたりしますが、フードや栄養について特集を組まれることは、ほどんとないからです。
さまざまな素材が『加工されている』ということや、『穀類』『豆類』や、『タンパク質』について、まだまだ書きたいことがあるので次回に続きます。