診療方針

当院の診療についての考え⽅を紹介します。

ペットの体に優しい治療法を

往診では、お歳をとったペットに来院のストレスをかけたくないから・・・と、足腰の弱ったペット、寝たきりとなり、常に人の”介護”が必要となったペットを飼っているお宅に伺う機会が多くあります。動物の寿命に限りがあることはわかっている、弱ってくるのは老化現象だから、仕方がないのもわかっている、、でもなんとかならないものだろうか、1日でも長く、元気に一緒に過ごせないだろうか・・・。

腫瘍できているのはわかっているのだけれど、高齢なので麻酔をかけて手術はしたくない。でもこのまま放っておくのも不安・・・。また、アトピーや関節炎などの慢性疾患を持っていることで、薬が手放せない、でもこのまま一生”薬漬け”の生活を送らせてもいいものか・・・。

私も”るいちゃん”の飼い主として、一日でも元気で長生きしてほしいと思うし、腫瘍ができたら切除が第一選択なのはわかっているけど、高齢になったらやっぱり麻酔はかけたくない。慢性的な病気で長期的に薬を飲ませ続ける生活はさせたくない・・・そう思うのです。

現代医療、いわゆる西洋医学では解決が難しい病気でも、東洋医学(漢方、鍼治療)やそのほかの国や地域で伝わる伝統医学、そのほかの代替治療(健康食品、サプリメント、民間療法やその他の治療)で改善したり、完治したりするケースは人でもたくさんの報告がありますし、私が今まで治療に携わったぺット達でも、改善したり、完治したりするケースを沢山見ています。

人も含め、動物には本来自ら病気を治す”力”が備わっているはずなのです。西洋医学が、感染症は抗生剤でたたく、炎症、痛みは抗炎症剤や鎮痛剤で抑えるといった、いわゆる”対症療法”がメインであるのに対し、代替療法と呼ばれるものは、体が持っている”自己治癒能力”を引き出す方法が多いように思います。

慢性疾患・腫瘍性疾患・老齢性変化においては、”これだ!”といった特効薬の提供は難しいかもしれません。サプリメントであっても一生投薬が必要だったり、なんらかの治療が必要になる可能性も高いと思います。ただ、副作用を気にしながら長期でお薬を続けるよりも、ペットの体の変化に『上手にお付き合いする』方法を一緒に考えていけたらと思っています。当然、急性疾患など通常の治療で改善・完治が見込めるケースや、救急の疾患の場合は、通常の西洋医学を基礎とした治療を優先していきます。

西洋医学と代替医療のメリット・デメリットを生かしながら、ペットに優しく、飼い主様に少しでも満足していただけるような獣医療を提供していきたいと思っています。

代替医療についての考え方

人で言う、健康保険の適応となる一般の病院で受ける治療を医療を”通常医療”と表現するならば、それ以外の治療法を代替医療と表現します。現代医療は日進月歩以上の勢いで進んでおり、人の医療では科学技術を駆使した高度な医療機器を使った、高度先進医療と呼ばれるものが登場してきています。

一般的に、代替療法とは、東洋医学(鍼灸・漢方)や、アールユヴェーダのインド医学などの伝統医学と言われるものや、アロマ、マッサージ、健康食品やサプリメントなどの民間療法と呼ばれるものがあります。最近では、オゾン療法、点滴療法、栄養療法など、新しい分野での代替療法も行われています。

通常医療が”エビデンス(根拠)に基づく医療”・・・実験や研究により科学的なデータを蓄積し、治療において確率的な情報が提示できる医療なのに対して、伝統医療は経験医学であり、長い年月をかけて蓄積されてきた先人の経験から治療方法が確立されてきた医学と言えると思います。 私は、通常医療と代替療法にはそれぞれ一長一短があると考えています。通常医療は救急の病気や緊急の疾患の治療をして体調を改善させることや、さまざまな検査によって、体に起こっている不調の原因を検査によって視覚化することに優れているように思います。

現代医療の多くの治療方法は”対症療法”と呼ばれるものであり、熱があれば下げる、痛みがあれば抑える、細菌感染が起これば抗生物質で細菌をたたく、腫れものができれば切除する、といった起こった症状を科学の力で叩く、抑えるといった療法がベースとなります。また、それぞれの不調の個所ごとに”病名”があり、その”病名”に則した治療を行うことになります。そのため、 救急疾患や緊急の場合は、劇的な効果を発揮することが多いのですが、慢性疾患、老齢性疾患、腫瘍性疾患などにおいては思うように改善されないことも多く、苦労する場合がしばしば見られます。

代替医療の多くは、体全体をみる医学であり、例えば鍼灸などでは腰痛であっても腰以外の部分にも鍼を打ちますし、関節炎のためのサプリメントを飲んでいると、体が楽になって疲れにくくなったり、皮膚や被毛に艶が出たりだとか、全身がプラスになる作用が起こったりします。また、現代医療にプラスして代替療法を併用することによって、相乗効果が出ることもあります。当院では、訪問医療でできる範囲の代替医療を備え、ご自宅で、その子にあった治療方法を選択できるように準備をしています。

当院の代替療法について