ペットが食べるフードについて⑦
8月15日(水)、16日(木)は終日休診となります。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。
先日書いたブログの続き、、というか補足です。
何種類かのフードをローテーションしていくとき、ドライフードはできるだけ小さなパッケージを選んで使い切ってから次のフードに・・・とお伝えしたのですが、ドライフードを買うときの大きさの選び方、保存の方法の話です。
ドライフードは密閉されている間は(おそらく)密閉されているので、空気と触れることがないのですが、開封した瞬間から空気と触れます。
空気と触れると、『酸化』します。
『酸化』というのは、金属でいうと錆びること。
食べ物でいうと、傷むこと、です。
ドライフードには、『酸化防止剤』というものが添加されています。
酸化防止剤、というものは、フードにコーティングすることで、そのフードの代わりに『酸化』されて、フードが酸化されるのを防ぐ働きがあります。
どれほどの量が添加されているかわかりませんが、『酸化防止剤』が防波堤となって、フードを守るためにひとたび『酸化』されてしまうと、その役目を終えます。
繰り返し持続的に酸化防止してくれるわけではありません。
それが天然のものであっても、合成されたものであっても、永久に酸化を防いでくれるものではありません。
イメージとして分かりやすいのが、私たちが食べる袋菓子、スナック菓子です。
ポテトチップス、開封した時はサクサクして美味しいのですが、開封後、何日なら食べれますか?
一週間も置いておくと、たとえ輪ゴムで封をしても、サクッと感もなくなりますが、なんとなく油が臭うというか、まずく感じる感覚はないでしょうか。
あれが『酸化』です。
酸化した油は、体にとってはとても悪いものになります(←酸化した油の害はいつか書きたいです。)。
以前、とある大学の先生の肝臓のセミナーで、
生後6か月のマルチーズが、避妊手術をしようと術前検査をしたところ、肝臓の酵素の値がやや高い。
詳しい検査をしても、先天的異常を含めて肝臓に明らかな問題がない。
薬物治療をしてもあまり変化もなく、飼い主さんから生活環境を精査すると、生後2~3か月時点でペットショップさんから購入した際、経済的だからと、8kg(だったと思います)の大袋のフードを購入。
マルチーズは体が小さいですから、いまだに当初のフードを与え続けているとのこと。
フードを新しいものに取り換えただけで肝酵素は正常に戻ったとのこと。
このような状態を『非特異的反応性肝炎』と言います。
肝臓がダイレクトに侵されているわけではなく、そのほかの要因により、肝酵素が上昇してしまうことです。
歯肉炎、腸炎、膵炎などでもこのような現象が起こります。
つまり、酸化したフードを食べることで、中毒になるわけでもなく、下痢になるわけでもなく、気づかないうちに体に負担をかけているということです。
『酸化』というのは『腐った(細菌が繁殖した)』こととは違いますから、意外にお腹はこわさないんですよね。
ひとたびフードを開封したらどのくらいで食べてればいいのか?
フードメーカーさんにいわせると、以前聞いたときは3週間~4週間くらいで・・と返答があったような覚えがありますが、上記のポテトチップスを思い出してもらうと、一か月前に開封したポテチを安心して美味しく食べられるか、ということになるわけです。
かといって、小さいパッケージは割高。お財布事情もあります。
なので、開封したフードは、毎回できるだけ空気を抜いてきっちり封をして保存することが大切です。
私は往診でお宅に伺いますから、大袋の口が封をされることもなく、パカっと大きな口を開けたままで保存しているお宅を時々見かけます。
お腹を壊すでもなく、体調不良を起こしているわけでもないのですが、『口はきっちり閉じてください~』とお願いします。
開封後、大きなタッパーに移し替えて存する飼い主さんもいます。一見、密閉しているように見えますが、タッパーのフードが入っていない空間は『空気』です。
真空にしない限り常に空気に触れていますし、開け閉めするたびに空気の入れ替えがされますから、もとのパッケージを密封するより酸化が早いのでは?と思います。
そして、米の保管と同じように、台所の下の棚の中の冷暗所で保管している方も多いかと思いますが、米は乾物なので問題ないのですが、ドライフードは乾いたように見えて、そこそこ水分を含んでいます。
なので、湿気の多いところで保管すると『傷み』ます。
保管場所も結構大切です。
多頭飼いしている飼い主さんのお宅のワンコが2匹同時に下痢になりました。
いつもと同じフードを与えており、ほかに何か与えた記憶もなく、思い当たることがありません。
元気はあるので、下痢止めで対処しましたが、あまり改善は見られず。
1っか月ほど前に開封したフードが残り4分の1程度。フードの保管がタッパーに詰め替えて台所の棚の一番下に置いてあったので、そのフードを止めて、同じ種類でいいので、新しいものに変えていただいただけで、解決しました。
『おやつ』も同様だと思います(我が家はたまにしかおやつを与えないので、かなり長い間食べさせちゃいますから、偉そうなこと言えませんけど)。
乾燥したジャーキーならいいのでは?と思われる人もいるかもしれませんが、たとえば、私達、人のお酒のおつまみの『さきイカ』。
たとえ輪ゴムでキッチリ封をしていたとしても、3か月も半年も前のさきイカを、食べようとは思わないのでは??
『ペットのために作られたもの』になると、とたんに『食品』としての感覚が薄れてしまうような気がしてしまうのは、なぜなんでしょうね?って思います。