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ペットが食べるフードについて⑧

19日(金)午後、および20日(土)は終日休診となります。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

 

今回は油の話です。

個人的に、油は健康を維持するための”キモ”ではないかと思っています。

 

DHA・オメガ3脂肪酸が体に良い。

 

これは人のほうでも浸透している話ですし、哺乳類すべてに言えることですから、犬や猫にとっても重要な要素になります。

脂肪酸には

飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸があり、

不飽和脂肪酸にはオメガ3、オメガ6、オメガ9脂肪酸があって、オメガ3、オメガ6は必須脂肪酸と言います。

・・・・と話を話を進めていくと、小難しくなるので、今回はオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸との関係についてできるだけ小難しくならないように書きます。

 

オメガ6脂肪酸は炎症を起こして、細胞を固くする油

オメガ3脂肪酸は火消し役で、細胞をしなやかにする油

 

オメガ6が悪者ということではなく、ひとまずは、ざくっというとそんな認識を持ってください。

必須脂肪酸というのは、体内で合成することができないので、食べ物で摂取するしかないですよ、ということです。

 

私達を構成している細胞は、その一つ一つは『細胞膜』という膜に包まれています。

で、その細胞膜の構成成分にオメガ3とオメガ6の脂肪酸が必要になります。

 

オメガ3を沢山含んだ細胞膜でできた細胞は炎症を起こしにくくしなやかになり、

オメガ6を沢山含んだ細胞膜でできた細胞は炎症を起こしやすく硬くなる。

 

そんなイメージになります。

 

炎症を起こしやすいって、、、やっぱりダメじゃん!!・・・そうではないのです。

私たちの体は、常に細菌やウィルスなどが入り込む生活をしており、侵入してきたそれらに対して戦うためには炎症を起こすことが必要なのです。

炎症と言っても、明らかにインフルエンザのような状態にならなければ、細胞レベルで常にそういた仕事をしてくれていることで、健康を害することなく生活ができるのです。

 

問題は、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の体内での比率です。

理想のバランスは

オメガ6:オメガ3=2:1~6:1

と言われています。

実際に栄養療法を実践している人医の先生の話だと、1:1がベストだと言います。

 

ペットの総合栄養食を規定しているAAFCOの最大限度値は30:1なのだそうです。

人での理想のバランスは2:1とかなのに、本当にペットには30:1でいいのか?という話になりますが。

 

オメガ6脂肪酸は、サラダ油や鶏肉の油分や、さまざまなお野菜・穀物に微量に含まれる脂肪酸もオメガ6脂肪酸が多くなります。

オメガ3脂肪酸は植物性のものでいうと、エゴマ油、アマニ油などに豊富に含まれ、動物性だと青魚の油に多く含まれているというのは、よく知られた話です。

 

鶏肉のオメガ3とオメガ6の比率は、それだけですでに

オメガ6:オメガ3=30:1であり、

例えば、人の食事で鶏のから揚げをすると、もっともっとオメガ6脂肪酸の接種割合が増えてしまうことになります。

 

オメガ6脂肪酸は、日常の食生活をしていれば勝手に体内に入ってくる油。

オメガ3脂肪酸は、意識して取らないと摂取が難しい油。

(厳密にいうと、オメガ6を豊富に含んでいる油でも、オメガ3脂肪酸が0ということはないので、ごくごく少量は摂取ができていますが)

 

なので、どう考えても現代の食習慣は、オメガ6脂肪酸が多すぎで、オメガ3脂肪酸が少なすぎる、ということです。

だから、意識して積極的に摂りましょう、ということになるのです。

 

私が勉強している分子栄養学の人医の先生は意識してオメガ6脂肪酸は極力減らし、積極的にアマニ油を摂取し、DHAのサプメントをガンガン飲んでもオメガ6:オメガ3=1:1にはならないそうです。

そのくらい、オメガ3脂肪酸は摂取の難しい油、ということのようです。

 

ちなみに植物性のオメガ3脂肪酸は体内で何回か酵素によって化学変化を起こして、魚の油の成分であるDHAやEPAとなります。

哺乳類の体内で利用できるのは、DHAやEPAの形になってからになります。

実は日本人は、島国で魚の摂取が多かったのでDHAやEPAがダイレクトに摂取できる環境だったせいか、植物性のオメガ3脂肪酸をきちんとDHAやEPAに変換できる人は20%ぐらいなのだそうです。

犬や猫は、もともとが肉中心の食生活をする生き物なので、たぶんですが、植物性のオメガ3を体内で利用可能なDHAやEPAに変換するのは難しいと考えられるので、割り切ってサプリメントで取ったほうが間違いないとも言われています(もちろん、魚を沢山食べてもいいです)。

なので、人でもきちんとDHAやEPAを体内にいれたいと思うのであれば、サプリメントのほうが間違いないと思います。

サプリメントは毎日のこととなると、費用もかかってきますから、植物性油でもまったく利用されないわけではないとも思っているので、健康状態が問題なく生活しているワンコさんには、ひとまずアマニ油をちょっとだけ振りかけてあげてね。と指導することもあります。

 

あと、『鹿肉にはオメガ3脂肪酸が豊富』

という話を聞いたことがある人もいると思います。

 

これは別に鹿が体内でオメガ3を合成できるわけではありません。

ちなみに青魚もその体内でオメガ3を合成しているわけではありません。

 

青魚の場合、エサとなる植物プランクトンがオメガ3脂肪酸を豊富に含んでおり、それを摂取することでオメガ3が豊富な細胞が出来上がる、ということで、同様に鹿も(おそらく野性の生き物はということだと思うのですが)、エサとなる自然界の草にオメガ3が豊富に含まれるので、オメガ3が豊富な細胞が出来上がる、ということだと思います。

 

なので、青魚を水族館で人が配合したエサを与えたり、鹿を家畜化して牧草や配合飼料を与えて育てたら、オメガ3脂肪酸が豊富なお肉にはならないと思います。

あと、大事なのはオメガ3脂肪酸は『酸化しやすい』『熱に弱い』ということです。

酸化しやすいということは、傷みやすい油、ということです。

傷んで酸化した油は、とても体に良くないです。

アマニ油は開けたら冷蔵庫で保管して、さっさと使う。炒め物には使わず、サラダやおひたしにかける・・・これが基本。

DHAやEPAのサプリメントは通常ソフトカプセルに入っていますが、これも空気に触れるのを避けるためです。

 

ドッグフードには、あえて『DHA配合』を唄っているものも多いですが、個人的には、ひとたび開封した瞬間から酸化が始まるドライフードで、はたしてDHAがいつまで良質の状態で維持できているのか。

また、熱に弱いオメガ3脂肪酸が、フードの生成過程のどこで添加されたのか、、最初の材料を混ぜ合わせる段階で加えて、そのあと熱を加えて加工したら、さてさて?、と思ってしまいます。

DHA摂取を狙ってそれが豊富に含まれているフードを選ぶよりも、別に足し算して与えたほうが間違いないと、私は思います。

 

あともうひとつ、サプリメントを選ぶときですが、

サプリメント自体は空気に触れないようにソフトカプセルになっていますが、中身自体が、その生成過程で高い熱が加わったり、空気に触れている時間が長いと粗悪な油になってしまいます。

信頼できるメーカーさんを探すのは難しいのですが、1つの目安として

『粗悪なDHAが魚臭がきつく、良質なDHAはあまり魚臭くない』ようです(あくまで目安です)。

もともと魚油ですから、臭わないことはないのですが、確かにソフトカプセルから開けると、ものすごく魚臭くて指についたらなかなか臭いが落ちないものと、そんなに苦にならない油はあります。お試しください。

 

オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸の体内での作用・効果は次回に続きます。

(早めの更新を目指します・・・(汗))。

 

ペットが食べるフードについて⑦

8月15日(水)、16日(木)は終日休診となります。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。

 

先日書いたブログの続き、、というか補足です。

 

何種類かのフードをローテーションしていくとき、ドライフードはできるだけ小さなパッケージを選んで使い切ってから次のフードに・・・とお伝えしたのですが、ドライフードを買うときの大きさの選び方、保存の方法の話です。

 

ドライフードは密閉されている間は(おそらく)密閉されているので、空気と触れることがないのですが、開封した瞬間から空気と触れます。

空気と触れると、『酸化』します。

『酸化』というのは、金属でいうと錆びること。

食べ物でいうと、傷むこと、です。

ドライフードには、『酸化防止剤』というものが添加されています。

酸化防止剤、というものは、フードにコーティングすることで、そのフードの代わりに『酸化』されて、フードが酸化されるのを防ぐ働きがあります。

どれほどの量が添加されているかわかりませんが、『酸化防止剤』が防波堤となって、フードを守るためにひとたび『酸化』されてしまうと、その役目を終えます。

繰り返し持続的に酸化防止してくれるわけではありません。

それが天然のものであっても、合成されたものであっても、永久に酸化を防いでくれるものではありません。

 

イメージとして分かりやすいのが、私たちが食べる袋菓子、スナック菓子です。

ポテトチップス、開封した時はサクサクして美味しいのですが、開封後、何日なら食べれますか?

一週間も置いておくと、たとえ輪ゴムで封をしても、サクッと感もなくなりますが、なんとなく油が臭うというか、まずく感じる感覚はないでしょうか。

あれが『酸化』です。

酸化した油は、体にとってはとても悪いものになります(←酸化した油の害はいつか書きたいです。)。

 

以前、とある大学の先生の肝臓のセミナーで、

生後6か月のマルチーズが、避妊手術をしようと術前検査をしたところ、肝臓の酵素の値がやや高い。

詳しい検査をしても、先天的異常を含めて肝臓に明らかな問題がない。

薬物治療をしてもあまり変化もなく、飼い主さんから生活環境を精査すると、生後2~3か月時点でペットショップさんから購入した際、経済的だからと、8kg(だったと思います)の大袋のフードを購入。

マルチーズは体が小さいですから、いまだに当初のフードを与え続けているとのこと。

フードを新しいものに取り換えただけで肝酵素は正常に戻ったとのこと。

 

このような状態を『非特異的反応性肝炎』と言います。

肝臓がダイレクトに侵されているわけではなく、そのほかの要因により、肝酵素が上昇してしまうことです。

歯肉炎、腸炎、膵炎などでもこのような現象が起こります。

 

つまり、酸化したフードを食べることで、中毒になるわけでもなく、下痢になるわけでもなく、気づかないうちに体に負担をかけているということです。

『酸化』というのは『腐った(細菌が繁殖した)』こととは違いますから、意外にお腹はこわさないんですよね。

 

ひとたびフードを開封したらどのくらいで食べてればいいのか?

フードメーカーさんにいわせると、以前聞いたときは3週間~4週間くらいで・・と返答があったような覚えがありますが、上記のポテトチップスを思い出してもらうと、一か月前に開封したポテチを安心して美味しく食べられるか、ということになるわけです。

 

かといって、小さいパッケージは割高。お財布事情もあります。

なので、開封したフードは、毎回できるだけ空気を抜いてきっちり封をして保存することが大切です。

私は往診でお宅に伺いますから、大袋の口が封をされることもなく、パカっと大きな口を開けたままで保存しているお宅を時々見かけます。

お腹を壊すでもなく、体調不良を起こしているわけでもないのですが、『口はきっちり閉じてください~』とお願いします。

開封後、大きなタッパーに移し替えて存する飼い主さんもいます。一見、密閉しているように見えますが、タッパーのフードが入っていない空間は『空気』です。

真空にしない限り常に空気に触れていますし、開け閉めするたびに空気の入れ替えがされますから、もとのパッケージを密封するより酸化が早いのでは?と思います。

 

そして、米の保管と同じように、台所の下の棚の中の冷暗所で保管している方も多いかと思いますが、米は乾物なので問題ないのですが、ドライフードは乾いたように見えて、そこそこ水分を含んでいます。

なので、湿気の多いところで保管すると『傷み』ます。

保管場所も結構大切です。

 

多頭飼いしている飼い主さんのお宅のワンコが2匹同時に下痢になりました。

いつもと同じフードを与えており、ほかに何か与えた記憶もなく、思い当たることがありません。

元気はあるので、下痢止めで対処しましたが、あまり改善は見られず。

1っか月ほど前に開封したフードが残り4分の1程度。フードの保管がタッパーに詰め替えて台所の棚の一番下に置いてあったので、そのフードを止めて、同じ種類でいいので、新しいものに変えていただいただけで、解決しました。

 

『おやつ』も同様だと思います(我が家はたまにしかおやつを与えないので、かなり長い間食べさせちゃいますから、偉そうなこと言えませんけど)。

乾燥したジャーキーならいいのでは?と思われる人もいるかもしれませんが、たとえば、私達、人のお酒のおつまみの『さきイカ』。

たとえ輪ゴムでキッチリ封をしていたとしても、3か月も半年も前のさきイカを、食べようとは思わないのでは??

 

『ペットのために作られたもの』になると、とたんに『食品』としての感覚が薄れてしまうような気がしてしまうのは、なぜなんでしょうね?って思います。

 

ペットが食べるフードについて ⑥

ほんとに更新が遅れて申し訳ありません。

たんぱく質のお話、続きです。

 

たんぱく質の摂取で大切なのは加工方法です。

たんぱく質は熱が加わることによって変性します。

卵を茹でると固くなる、お肉を茹でると白くなる・・ということです。

実は、タンパク質は、熱を加えて変性していくと胃腸での吸収率が落ちます。

熱を加える温度が高くなれば高くなるほど、変性の度合いが大きくなります。

 

つまり、生のままのお肉が一番変性が少なく、

生 < 蒸す(100℃以下)< 茹でる(100℃)< 焼く < 揚げる

こんな感じで変性度合いが大きくなります。

蒸した鶏肉と、カリカリに揚げすぎたて焦げちゃった唐揚げでは、同じように食べても体内での利用効率はずいぶん変わるようです。

 

なので、ペットのご飯の極論は『生食』ということになるのだと思います。

フリーズドライで熱を加えないフードもあり、これも熱変性は起こりませんので、タンパク質の『質』は良いものだと思います、、がかなり高価です。

(生食はいろいろな考え方があるので、今回は自分の意見は割愛します)

 

これを市販で買えるドッグフードで考えると、一般的にはドライフードと缶詰フード。

ドライフードに水を加えれば缶詰になる?

缶詰を乾燥させればドライフードになる?

いえいえ、全然違うんです。

 

最近のプレミアムフードはかなり工夫して作られているのですが、

一般的なドライフードは、その加工の工程で、高熱・高圧がかかります。

そうすることによって、乾燥していても硬すぎずにサクッと噛める、、そんなフードが出来上がります。

缶詰フードはイメージ的には人が食べるシーチキンのようなもので、最終的に密封保存されるわけですから、調理をすることと、殺菌の目的のみで熱を加えればいいので、熱の加わり方がドライフードと比べると全然違うので、缶詰のほうがかなり栄養的な価値が高いと思われます。

 

それに加えて、ドライフードはどんなメーカーをみても、炭水化物が40~50%。全体の約半分。

たぶんなのですが、あのサクッとした感触を出そうと思うと、クッキーやスナック菓子のようにでんぷん質がないとつくれないのでは?と思います。

お肉だけを乾燥して保存したもの・・・いわゆるジャーキーって、固いですもんね。

それにひきかえ、缶詰でその50%を炭水化物にした場合、かなりネチョネチョしたものになると思うので、一般的に炭水化物の比率が下がり、タンパク質の比率が上がります。

炭水化物たっぷりのお値打ちな缶詰フードと、そこそこの価格帯の缶詰フードを開けてみると、かなり性状が違います。

なので、肉っぽい性状の缶詰めのフードは価格も高くなりますが、栄養的な価値は高くなると思います。

 

なので、私は小型犬などで経済的に許されるのであれば、缶詰フードのほうがいいですよ、と話をします。

高齢犬は食べたものの消化吸収能力が落ちてきますから、缶詰を足し算したほうがいいですよ、ともお話をします。

もしくは、人が食べているお肉をボイルしてトッピングしましょう、と。

 

ただ、以前あったのですが、高齢犬で缶詰をあげたらお腹をこわした、とのこと。

みると、かなりお値打缶詰だったので、申し訳ないが、ちょっと缶詰めのランクをあげてくださいとお願いしたところ、それだけで便の状態も整い、体重まで増えて、毛艶もよくなった子がいます。

そのくらい、食べるものって、生き物の健康を左右するものだと思います。

 

あと、先日書いたレンダリングの素材。

『〇〇ミール』『〇〇パウダー』と書かれているものは、私達がイメージする鶏肉や豚肉とは違い、人の食用部分(可食部位)の残りの、本来廃棄すべきクズ肉を工業製品として加工して、フードの材料になったものです。

それもタンパク質だと考えるのであれば、それはそれでいいのですが、レンダリングされる過程で、かなりの熱が加わって加工されて(ドロドロになるのか、水分を抜いてパウダーになるのか私にはわからないのですが)フードの材料の一部となり、それがさらに、ドライフードの粒となるために、高熱と高圧がかかるわけですから、いったいどれだけが犬や猫の体内で栄養として使われるのでしょう?と思います。

 

チキンミールならまだしも、フェザーミール・・・フェザーって”羽根”???みたいな。

ネットで検索すると、フェザーミールは消化の悪いものように言われるが、各種アミノ酸が含まれていて、栄養素が豊富である、、と書かれているものを見つけましたが、同じくネットで検索すると、野菜を作る農業用の肥料であり、その製造工程は、『3気圧、180℃、3時間 加圧蒸製して乾燥させたもの』とありました。

これだけ熱や圧がかかったタンパク質が、果たしてどれだけが体に吸収される形で残っているのでしょう。

しかも、本来、野菜の肥料として加工されているものを、それを動物性たんぱく質と称して、犬や猫の食べ物として与えていいものか?

フードメーカーさんには申し訳ないけど、私には疑問です。

 

あと、一番良いと思われるフードを1つに絞ろうと思う飼い主さんも多いのですが、私はさまざまな種類のタンパク質を取りましょう、と話をします。

 

板東英二さんは1日に大量のゆで卵を食べるのは有名な話。

以前、テレビで紹介されていたのですが、芥川賞作家の羽田圭介さんは、外食以外の家で食事をするときは、胸肉をボイルして胸肉ソーセージを大量に作って、毎日タンパク源はそれしか食べないそうです。

会場の反応は『え~~~っ』とブーイング。

人において、1種類のタンパク源のみを極端に多くとることを不自然だと考えるのに、どうしてペットの食事になると、1種類にこだわろうとするのでしょう?

 

鶏肉、豚肉、魚、、、それぞれ動物性タンパク質ですが、それぞれにおいて、アミノ酸の比率は違う。ビタミン、ミネラルなどの含有量も違う。

自分も、自分の家族も、自分のワンコも、お友達のニャンコも、体が必要とする栄養素の分量は絶対に同じではありません。

生活習慣、代謝、胃腸の具合、その人の体質など、さまざまな要因で、理想とされる形はひとつには決められません。

どの比率でどれだけのアミノ酸を摂取するのがその人、そのワンコにとって正解かわからないので(調べようがないので)、さまざまなものを摂取することで、結果的にバランスが取れる、ということになるのだと思います。

人でいうバランスの良い食事・・・というのは、バランスの良い理想的な食事内容を1つに決めて、それを365日ずっと食べましょう、ということではなく、毎日いろんなものを摂取しましょうね、ということですよね。

なので、缶詰なら1缶の消費ペースが速いので、さまざまな種類のものを与えやすいので、いろんな缶詰を使いましょう、と話をします。

ドライフードでいくのであれば、可能なら小さなパッケージで使い切ったあと、信頼できるいくつかのメーカーをローテーションして利用するか、お気に入りのメーカーがあるなら、その中でいろんな素材のフードの種類にローテーションしていきましょう、とお伝えします。

 

あくまでこれは、私の持論です。

フード以外のものは与えてはいけない、人の食べているものあげてはいけない・・・犬には犬用の食べ物を、といった現代獣医療で考えると、決して模範解答ではないと思うのですが、絶対に間違ったことは言っていないと思っています。

 

まだ書きたいことがあるのですが、今日はこのへんで。

(なんとか早めに更新しなくちゃね、です・・・)

ペットが食べるフードについて ⑤

6月23日(土)、および7月3日(火)は都合により終日休診となります。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。

 

少し更新が遅れました。

『ブログの更新、楽しみにしてますよ♪』と言ってくだる飼い主さんもいらっしゃって、食については興味がある方が多いんだなあと改めて感じています。

 

たんぱく質の話です。

 

たんぱく質には

『動物性たんぱく質』と『植物性たんぱく質』があります。

動物性たんぱく質は、いわゆる『お肉』。

植物性たんぱく質は、代表的なものが、畑の肉と言われる『大豆』。

人間や犬や猫などの哺乳類は、当然ですが、動物なので動物性たんぱく質でできています。

 

たんぱく質は、20種類のアミノ酸が材料となって構成されており、そのアミノ酸には必須アミノ酸と言って、体内では合成できないので食べ物から直接摂取するしかないものがあります。

私も専門家ではないので、アミノ酸の小難しいカタカナは覚えられないのでざっくりとしたイメージで捉えています。

 

例えば、アミノ酸A、B,C,Dがあったとします。

A,B,Cは非必須アミノ酸とします。

AとBが結合するとCのアミノ酸ができるとすると、C=A+Bなので、アミノ酸Cは、Cとして食物から取り込まなくても、AとBがあれば合成できる・・・これが非必須アミノ酸のイメージです。

Dは必須アミノ酸とします。

これは、A+B+Cをしても、Dになることはできないので、直接食べ物から作らないと、体内で不足する、ということ。

アミノ酸が結合するとたんぱく質が作られます。

たんぱく質は、体のほぼすべて臓器の構成成分になり、その構成するアミノ酸の種類、バランスがすべて違っています。

例えば皮膚の細胞のアミノ酸がA+B+C+Dで構成されていた場合、Cの摂取が多少足りなくても、AとBがあればCは合成てもらえるので材料としてはまかなえるのですが、Dが足りなければ皮膚の材料そのものが足りないことになるので、肌がカサカサ、ボロボロになっていく、、、そんな感じでしょうか(本当は皮膚でいうとビタミンやミネラルも必須なのでタンパク質だけでは話が足りないのですが)。

 

・・・わかりやすく説明しようとして、かえってわかりにくくなったかも、です(スイマセン)。

 

で、そのタンパク質の構成成分のバランスをスコア化したもので”プロテインスコア”というものがあります。

上記のD・・・食物に含まれる必須アミノ酸の量を数値で表したもので、数値が高い食品ほど良質のたんぱく質を含むことになります。

同じ量のタンパク質を摂取しても、スコアが低いとアミノ酸がうまく利用できていないことになります。

 

◆プロテインスコア

鶏卵:100

イワシ:91

豚肉:90

鶏肉:87

牛肉:80

牛乳:74

大豆:56

豆腐:51

トウモロコシ:51

小麦:51

 

鶏卵は、その材料だけでヒヨコという筋肉・骨で骨格が作られ、内臓を持ち、羽をまとった生物として誕生できますのでパーフェクトなバランスと考え、そのスコアを100として、ほかのものを比較しているようです。

魚、お肉などの動物性たんぱく質はかなり数値が高いのに対し、畑のお肉と言われる大豆でも56、小麦やトウモロコシは51と、卵と比べると摂取したたんぱく質の利用率が半分くらい。。。ということになります。

 

なので、フードの組成でタンパク質30%のフードでも、主原料(一番最初に書かれている材料)が”穀物”の場合は、体の中での利用効率がかなり落ちることになりますので、たんぱく質が25%であっても主原料が鶏肉や豚肉などの動物性たんぱく質のほうが、体内での利用効率が上がるはずです。

 

なので、私は原材料が動物性たんぱく質をメインとして作られているフードをお勧めしています。

穀物メインのフードはおそらくそのタンパク質のかなりの割合が体に吸収されずに便に出てしまっている気がします。

穀物メインのフードは原材料が安くできますので、価格を抑えることができます。

なので全てとは言いませんが、安いフードは便の量がやたら多い”ドカ便”になることが多いので、フードの見直しをしてもらうと、同じ量与えているのに便があまり出なくなりましたが便秘なのでは?大丈夫でしょうか?、と聞かれることもしばしばです。

 

余談ですが、そうすると、日本食の文化は米を主食として肉をがつがつ食べる文化ではないのに、昔の人だって普通に体が維持できているのはなぜ?という思いが湧くかもしれませんが、例えば日本食に欠かせない、納豆・豆腐・味噌・醤油などの大豆製品。

大豆だけではプロテインスコアは56でしたが、玄米を一緒に取ると、大豆で不足する必須アミノ酸を玄米がカバーしてくれて足し算するとプロテインスコアが100に近くなるようであったことと、昔はイナゴのつくだ煮や蜂の子など、肉は摂取しなくても昆虫などの動物性たんぱく質を摂取することで不足分をカバーしてバランスを取っていたようです。

先人は、さまざまな穀物、野菜、季節のものを摂取することで肉食メインの文化ではなくてもその肉体を維持していたのですね。

ちなみに大豆はプロテインスコア56であっても、小豆やひよこ豆、レンズ豆などなど・・3種類程度の豆類を組み合わせて食べるとプロテインスコアはそれぞれの不足分を補い100に近くなるのだそうです。

 

じゃあ、動物性たんぱく質が主原料になっているフードはすべて良質か・・・というと、実はこれにもからくりがあります。

続きはまた近日中に書きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペットが食べるフードについて ④

 

フードを買うと、パッケージの裏か横に様々な表示があります。

『原材料名』

『保障分析値』

これらから、様々な情報を得ることができます。

以前のブログでもちらっと書きましたけどね。

 

往診の合間に、ホームセンターに立ち寄り、陳列されているフードからこっそり写真を撮ってきました(買わないのにゴメンナサイ)。

 

 

このフードの保障分析値は

たんぱく質 16.5%以上

脂質    12.0%以上

粗繊維   3.5%以下

灰分    6.5%以下

水分    10.0%以下

…リン以下はごく少量のためひとまず割愛。

これらと足し算すると、48.5%です。

では、残りの51.5%は???

答えは炭水化物です。

正確には、水分10%を引いた状態でトータル100に直して考えないといけないのですが、面倒なのでざっくりいきます。

粗繊維も炭水化物の仲間になりますが、私たちが吸収できない食物繊維と考えてください。

腸内環境を整えるためにとても重要な栄養素です。

ちなみに灰分とは、燃やした時にできるゴミと同じ、便となる残渣です。

 

炭水化物は表示義務がないので、大半のフードの表示はこのようになっています。

 

すいません、かなり見にくいですが、

保障分析値

たんぱく質 23.0%以上

脂質    10.0%以上

粗繊維    4.5%以下

粗灰分    8.5%以下

水分    10.0%以下

これらを足し算すると56%

炭水化物は44%となります。

 

つまり、ドライフードの約半分、50%くらいは炭水化物(でんぷん質)です。

 

 

ざくっと様々な商品の保証分析値です。

 

私は分子栄養学の勉強をしている観点から、人の食事において糖質制限を推奨している派です。

糖質制限、、、というより、現代人は炭水化物(糖質)のとりすぎでタンパク質などのほかの栄養素が足りなさすぎ。

麺やお米、パンや菓子でお腹がいっぱいになると満腹になり、タンパク質などの摂取量が絶対的に少ないと思っています。

糖質過剰がいかに怖いことなのかは、とてつもなく長い話になるので、またの機会に書けたらと思います。

 

人体も動物も体の構成成分である細胞はタンパク質と脂質でできています。(”脂肪”ではありませんよ)。

筋肉も骨も、血液も、ほかの体液も、皮膚も毛も、酵素も、ホルモンも、免疫力アップと言われる免疫細胞も、構成成分はメインがタンパク質。

そして体のタンパク質は摂取したタンパク質からしか作ることができません。

糖質はエネルギー源にしかならず、体内でタンパク質には変換してくれません。

牛などの完全な草食動物は、食べた草をタンパク質に変換しているのではなく、食べた草によって胃腸の中で共存している腸内細菌を育てます。

細菌の構成成分はタンパク質であり、胃腸内で育てた腸内細菌を栄養源として吸収して体を作っています。

犬は雑食に進化を遂げたといっても草食動物ではありませんから、摂取したタンパク質からしか体は作れません。

なのでフード選びの際には、基本的にはタンパク質の含有量が多いものを選んでね、という話をします。

 

そうすると、一番下の28%のタンパク質を含有しているフードが優良で、一番上の16.5%のフードが粗悪なのか、、という感じになります。

ただ、ここで、タンパク質の”質”が重要になります。

これがフード選びのひとつのキモになると思います。

 

そこで、今度は原材料名をみます。

原材料は基本的に重量が多いものから順に並んでいます。

 

これは最初にくるのが

トリ肉(チキン、ターキー)

そして、トウモロコシ、小麦、玄米、米、大麦、オート麦、、、

 

これは最初に来るのが

穀類(コーングルテンフィード、小麦粉、米ぬか、小麦ふすま、大麦糠、脱脂米糠)

そして

豆類(脱脂大豆、乾燥おから)

肉類(チキンミール、フェザーミール)

 

最初に来るのが

穀類(トウモロコシ、小麦粉、コーングルテンミール、フスマ、パン粉、コーングルテンフィード等)

そして、肉類(チキンミール、チキンエキス、ビーフパウダー、ササミパウダー等)

最初に来るのが

チキン

そして、家禽ミール(天然グルコサミン源)、

コーングルテンミール、米、シリアルブラン、小麦、オーツ麦

 

・・・というように、『穀類』である植物性食品がメインになるか、『肉類』である動物性食品がメインになるか、ここにはないですが、『豆類』である植物性食品がメインになるか、フードによって違ってきます。

 

え、たんぱく質=お肉じゃないの??

 

違うんです。

 

タンパク質は、動物性たんぱく質と、植物性たんぱく質があります。

植物性たんぱく質・・というと、『大豆』をイメージしますが、トウモロコシや、小麦などにもタンパク質が含まれています。

スーパーに行ったとき、

鶏肉が100g100円だったとして、1kg買うと1000円です。

小麦粉1kgが250円くらいだったとして、価格が1/4になります。

 

ちなみに、原材料は『重量の多い順』に並びます。

お肉は水分を多く含んでおり、穀類は基本的に乾いていますので、1番目に穀類、2番目に肉類が来ているフードのお肉の含有量はかなり少なくなると考えられます。

私たちが食べている肉は、100gに20gくらいのタンパク質が含まれます。

え、肉100gのほとんどがたんぱく質じゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、肉はほとんどが水分なので、水分を抜いて考えるとそうなるのです。

なので、私たちが普段目にする『お肉』でタンパク質の量を確保しようと思うと、かなりの肉を使わないといけなくなりますので、コストがかかります。つまりフード代が高くなります。

価格を抑え、なおかつタンパク質量を確保するために、普通の『お肉』を使うのではなく、『〇〇ミール』を使い、『〇〇グルテン』を使って作ることになります。

『〇〇グルテン』の”グルテン”は、穀類に含まれるたんぱく質の成分。

パンを膨らませるのに薄力粉ではなく強力粉のほうがグルテン量が多いので生地がよく伸びて・・・の、あのグルテンです。

『小麦粉』そのものではなく、『グルテン』を使ったほうが、手っ取り早くタンパク量を増やすことができます。

 

『チキン』と『チキンミール』は違います。

『〇〇ミール』とは、レンダリングといって、人の食用に加工された肉のくずの部分や、人が食べない不可食部位を集めたものです。

なので、価格が安く抑えられます。そしてタンパク量を確保することができます。

レンダリングについては、ネットで検索すると詳しく書かれているサイトが沢山ありますので、気になる方は調べてみてください。

 

ペットフードが開発された経緯は先回書きましたが、人の食品業界が加工食品として使えなかった、本来であれば廃棄部分を利用してペットフードが作られている所以がこのあたりにみられるわけです。

 

加工されていてもタンパク質はタンパク質。

お肉から取っても、穀類やグルテンから取っても、タンパク質はタンパク質。

 

それを良しとするか悪いとするかは、購入する飼い主さんの判断だと思いますが、フードって、こういう風に作られていることを知らない方も多いかと思いますので、メーカーや、パッケージに大きく書かれている文言に惑わされることなくフードを選ぶ判断材料として考えていただければな、と思います。

 

実は獣医師である私は、数年前まで、こういったラベルの読み方を知らなかったのです。

私が不勉強であると言われればそれまでですが、実はこういったことを知らない、というか気にしない獣医師はとても多いはず、です。

自分も獣医の専門誌は定期購読していますし、病気についての専門書だってそれなりに読んできていたつもりです。

でも、病気の検査・治療法や新薬の情報は、いろんな獣医の雑誌で最新情報が特集されたりしますが、フードや栄養について特集を組まれることは、ほどんとないからです。

 

さまざまな素材が『加工されている』ということや、『穀類』『豆類』や、『タンパク質』について、まだまだ書きたいことがあるので次回に続きます。