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ペットが食べるフードについて ③

フードのパッケージに書かれている『総合栄養食』とはなんなのか。

これだけ食べていれば、ほかのものは食べなくても、ペットの健康は維持できる万能食・・・本当にそうなのでしょうか?

 

ドッグフードの由来は先日書きましたが、アメリカでは大手食品メーカーが人の加工食品の残渣を利用してドッグフードを作る開発競争が起こりました。

そして、その利便性と、経済性の一致により、当時の獣医師の偉い人やペットフード協会が ”現在の肉中心のフードは不完全であり、家庭で出る残飯は有害で動物用に加工したフードが望ましい” という見解を出し、ペットフードだけで必要な栄養素を満たす、という方向性のもと、総合栄養食、の定義がなされたそうです。

ちょっと”偏見を持った見方”かもしれませんが、ペットフード業界も”産業”ですから、大きな流れは合っているのではないかと思っています。

 

アメリカにはAAFCO(米国飼料検査官協会)という組織があり、AAFCOが必要な栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)の最小値を最大値を示したものを総合栄養食の基準としました。

日本では、ペットフード公正取引協議会という組織が、AAFCOの基準を採用し、日本でも総合栄養食としているようです。

 

では、総合栄養食の栄養バランスはどのように決められているのか?

その前に、人の正しい栄養バランスの基準って、どのようにして決められているか考えたことがありますか?
          

日本人の栄養摂取基準というものは、

6大栄養素(食物繊維を除くと5大栄養素)である、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維(最近は、野菜などから摂取できる“フィトケミカル”“食物酵素”が第7、8の栄養素、という概念もあります)をどれだけとるとよいかという基準を定めているものです。

例えば、30~49歳 男性(日本人の食事摂取基準 2015年版より)
1日に必要とするエネルギー(カロリー) 2650kcal
3大栄養素の必要量

炭水化物:50~65%(エネルギー比率)ご飯5.5杯(1杯235kcal)
タンパク質:60g(実質はお肉で300gくらい) 
脂質:20~30%(エネルギー比率)60~80g(大さじ5~7杯)

あと、ビタミン、ミネラルが細かく記述されています。

じゃあ、その必要量はどのように決められているのか???

実はここに細かいエビデンス(根拠)はないんです。。。実験や研究の結果をもとにしているわけではない様です。

というか、少なくとも私が調べた中では明確な答えは見つけられませんでした。

タンパク質〇〇%、脂質〇〇%・・・・をさまざまな比率でサンプルを作り、1年間食べ続けた時に、5年間食べ続けた時に、20年、30年、食べ続けた時に体がどのように変化するのか、、、なんて人では実験のしようがないですもんね。

ビタミンや、ミネラルに関しては、欠乏してしまうと体調不良を起こしますから、(例えばビタミンC欠乏症による壊血病とか)、『必須栄養素が欠乏しない量』として規定はされているようです。

 

そして、この炭水化物やタンパク質の必要量は、明治時代以降の先人が食べていた主食、副菜 などのバランス(日ごろ私達が食べている食事のバランスのこと)を標準的に考えている・・・だけ、、、らしい。

つまり大雑把に言うと、昔の日本人は、ご飯を主食として、おかずにお魚や野菜を食べてきたことで問題なく生活してきたんだから、現代人もそれが基準でいいんじゃないのかな、ってことです。

 

で、ペットの総合栄養食って、どのようにして考えられたという話に戻ります。

犬に関しては3万年ほど前にハイイロオオカミとの共通の祖先から分化し、1万5千年ほど前から、農耕生活を始めた人類と共に生きてくよう家畜化されたという歴史があります。
犬は、自分で獲物を捕まえたり、人の残り物をもらったりしていくうちに、肉食から雑食に対応できるように、胃腸の能力が変化していったようです。

・・・なので、人の残り物を食べていて問題なかったんだから、犬や猫の栄養摂取基準は、人と同じようなものを食べていけば大丈夫なんじゃないのかな、という背景があります(たぶん)。。

科学的な根拠や実験データに基づくものではないらしいんですよね。

医療では、過剰なまでに”エビデンスが”、”エビデンスが”と言われ、エビデンスの整わない代替医療やサプリメントは、効果のあるものも沢山あるのに、まだまだ正しく認知してもらえていない状況なのに、獣医業界やペット業界では『総合栄養食』を食べていれば大丈夫、なのです(ちょっと愚痴?)。

 

AAFCOの基準によると、成犬のフードの栄養バランスは、タンパク質が19%以上、脂質が12%以上。

なのでAAFCOの栄養摂取基準って、人の栄養摂取基準とバランスが似ている気がします。

犬は肉食寄りの雑食・・・という説明が一般的ですが、タンパク質19%の生活が果たして肉食寄りの食生活??と私には疑問符が付きます。

栄養学が学問として確立し、国家資格で栄養士が存在する人の領域でも、栄養に関してのパーフェクトバランスが分かっていないのに、犬や猫のパーフェクトバランスが分かるはずがないと思うんですよね

そうすると、うちの子にとって、何がベストなのかは、

獣医さんに勧められた、ペットショップの店員さんに勧められた、ネットの口コミが良さそう、、、と誰かに決めてもらうのではなく、自分で責任を持って決めるしかないのだと思います。

そして自分で決めるためには考えるための情報が必要で、今、手元にあるフードが一体どんなものなのか、まずは知る必要があります。

 

ということで、次は、ペットフードのラベルの読み方を書こうと思います。

 

 

 

ペットが食べるフードについて ②

飲食店とか小売店、業態でいろいろ差はあると思うのですが、『原価三割』という考え方があるようです。

販売価格に対して材料費は30%以下に抑えないと、ほかの人件費、光熱費、設備費等々の費用を差し引くと利益が出ないということ。

実際には、加工されていない原材料費は1割くらいじゃないと、かなり厳しい状況もあるのだとか。

 

私はフードメーカーさんや、卸の業者さんからドッグフードを販売価格よりも安い卸値で購入します。

卸の業者さんであれば、私に卸した金額よりも安い価格で仕入れます。まあ当然のことです。

そうすると、そこまでのところでも、本来飼い主さんが購入する金額の半額くらいの価値になるのでしょうか。

その半額の価値の商品は、工場で作られているのであれば、工場を作る費用、稼働させる費用、従業員の給与、広告宣伝費、例えば海外からくるフードであれば遠路はるばる海を渡る輸送費などなどが、その費用に乗っかっています。

パッケージだってタダではできません。

そういうものを差し引いていくと、フードの原材料費って、いったいいくらなのでしょう???

これは、ペットのフードだけではなく、人の食品にも同じことが言えますけどね。

 

で、たとえば原価3割を当てはめたとすると、

1kg1000円のフード×30% →→ 材料費300円

1kg3000円のフード×30% →→ 材料費900円

 

うちのるいちゃんは体重3.5kgのちびっこなので、1kgのドライフードがあれば10日分くらいのご飯になります。

材料費300円で1日分が30円

材料費900円で1日分が90円

さて、この費用でるいちゃんの1日分のご飯を作ってみましょう。

業務スーパーや激安ショップを利用して材料を調達したとしても、さすがに30円で作れるものって???

例えば鶏肉1枚300円で買ってきて、それを10等分して、その1かけらが1日分・・。え~。そんなの可哀そう。。

(900円分の食材をいろいろ購入して30等分してもいいわけですが・・)

 

そもそも市販で販売されているお値打ちなドッグフードは、気持ち悪いくらい安いんです。

これが常識化されています。

 

知り合いの獣医師で、食の意識がとても高い先生がいて、自分で考える理想的なドッグフードを商品化できないかと業者さんと相談したことがあるそうなのですが、材料を厳選していくと、とてもじゃないけど現実的な価格では商品化ができない、という結論になったそうです。

 

なので、価格の高いフードがすべて素晴らしいとは言いませんが、価格の安いフードは『それなりの理由』が存在することになります。

 

でも、価格がどうあれ材料がどうあれ、ペットフードは『総合栄養食』とうたってあれば、栄養バランスが取れていて、犬や猫には万能の良い食品なのでは?という疑問がでます。

次は『総合栄養食』っていったい何??という話を書きます。

 

☆余談です

我が家は毎日目玉焼きとソーセージを2本食べています。

何年か前に、毎日ソーセージを食べていると大腸がんのリスクが上がる、という記事がネットであったので、これは添加物の問題なのかなと考え、大手メーカーのソーセージではなく、無添加、手作りのソーセージをネットで探してみました。

すると、1本100円くらいが相場。

我が家は夫婦2人なので、2本×2人分=4本を毎日消費しますので、朝のソーセージ代だけで400円、一か月で12000円!

さすがに朝ごはんにこの費用はかけられません。

・・・ということで、なんとソーセージを作る器械を購入し、我が家は自分で作っています(変なところで凝り性です)。

2kgのひき肉を買ってきて、まとめて作って冷凍保存すると1か月分くらいになります。

 

挽き肉を捏ねて、

羊腸に詰めて、

ボイルして、

乾かして、一本づつに切り離して、

パックに詰めて冷凍保存。

 

相当な手間です。。。

 

コストコで2kgのひき肉を買ってくるとお値打ちですが、知多半島には”知多豚”というブランド肉があり、それが脂が甘くて超~美味しい。

せっかくなら美味しいものを食べたいので、ちょっと奮発して、知多豚のひき肉で作っても、羊腸代やスパイス代を含めても1本100円で買うよりも半額くらいでできます。

 

加工食品って手間がかかりますから、素材の料金より高くなって当然なんです。

いままでソーセージやベーコンは使い勝手のいいお値打ちな食材かと思っていましたが、自分で作ってみて、いかに手間のかかるものかと痛感。。。

 

 

ペットが食べるフードについて ①

『先生がおすすめのドッグフードはありますか?』

時々聞かれる質問です。

私は極力メーカー名は答えないようにしています。

(るいちゃんが何を食べているかと聞かれたらお答えはしますが・・)

 

インターネットの口コミ、

友人同士の情報交換、

ペットショップさんやトリマーさんのお勧めなどと比べて、

”獣医師”の肩書から発する発言は、飼い主にとって受け取り方がかなり違うからです。

 

獣医さんが勧めてくれたんだから、間違いないだろう・・・と。

 

今はペットも健康志向に伴って、食材にこだわったプレミアムフードがたくさん出ており、何が一番いいのかわからないのと、

あと、そもそもパーフェクトなドッグフードは存在しないと思っているので。

おそらく間違いないのは、人が普段食べている食材で作ってあげることだと思っています。

 

前置きしておきますが、我が家のるいちゃんはドッグフードです。

私は朝からバタバタ仕事の準備をし、帰宅の時間もままならず、人のご飯も作るのが面倒になる日が多いですから、ワンコに手作りは私の生活パターンでは無理。

ただ、それなりに持論はあるので、自分が妥協できる範囲でいろいろ工夫はしています。

 

私が小さいころ、外で飼っていた犬はまさに”人の残り物ご飯”でした。ご飯に魚のあらに、野菜の残りを刻んで。。。

小学校高学年でポメラニアンを飼ったとき、ブリーダーさんに勧められたと母が作ったご飯がドライフードをふやかして、そこにササミをほぐしたものを混ぜたフード。

私は最初見たとき、『この子、マーボー豆腐食べるの??』って思いました(笑)。

 

そもそも、ドッグフードとは何なのか?

その歴史をひも解いてみます。

 

ドッグフードは1920年代のアメリカで、軍用馬の役目を終えた廃用馬の肉の処分に困って、犬に与えたのが始まりだと言われているそうです。

そしてそこから、1930年代にユニ・チャームやネスレなど、アメリカの大手食品メーカーが、人用の加工食品の廃棄部分の食材を利用するために、ペットフード産業に進出。

1950年代に、ピュリナ社が、現在のような、軽くて保存のきくドライフードを開発、『経済的なフード』として量産を開始したのだそうです。

 

つまり、ドッグフードは『手軽に使えて、保存もきいて、なおかつお値打ちなもの』

という歴史があり、おそらくその普及によって犬や猫がとても飼育しやすくなり、ペットを飼うお宅が増え、1匹だけではなく多頭飼いのお宅もたくさん増えてきているのだと思います。

なので一般家庭でも、上記のような認識でいる方が多いと思います。

また、獣医業界と大手ドッグフード会社は切っても切れない関係となり、療法食というものが、獣医師の治療の一環として、標準的に取り入れられるようになり、獣医師もドッグフード以外は与える必要がなく、犬は犬専用のものを食べるべきだと教育を受けてきているので、飼い主さんにもそのように勧めているのだと思います。

私も4年前までは、普通にそのように指導していましたから。

 

例えば、尿石症になって一般食から治療食に変更してもらうとします。

20年ほど前は3kg3000円くらいでしたが、今は3kg5000円くらいします。

食事を変更しないと尿石症はなかなか解決しませんし、食事を変更してもらえれば、ほぼ解決できるトラブルのため、継続的に続けてもらうことになります。

ホームセンターで普通に陳列されているフードと比べると、場合によってはかなり割高。

特に猫の尿石症は多く、しかも多頭飼いの場合、2匹以上が一緒の器から食べているケースも多く、一斉にフードの変更を余儀なくされることがあります。

飼い主さんには、『ペットフードは米より高いっ』と嘆かれたこともあります。

 

最近は健康志向の飼い主さんも増え、フードメーカーでも、できるだけこだわりの食材を使って作るメーカーさんも出てきており、それこそ1kg3000円以上するフードもあります。

手作り食に興味がある飼い主さんに、私の知識の中でお伝えできる手作り食の説明をすると、特に大型犬になると『食材費がかかる過ぎて我が家では厳しい』と言われることもあります。

 

では、1kg1000円のフードと、1kg3000円のフードと、手作り食にかかる食材費と、何がどう違って、どのように考えるといいのか、ということを次回書こうと思います。

食と栄養ネタは書くと長くなるので、しばらく続きます。

 

 

 

 

 

 

 

5月5日

昨日は5月5日 こどもの日、ですが、私にとっては特別な日。

大切な友人の命日です、享年35歳。彼女がいなくなって丸3年になります。

 

動物病院ブログですが、今日は彼女の話を書きます。

 

彼女の病気はとても進行の早いガンでした。

手術をしたのにあっという間に再発し、その後も幾度の手術、抗がん剤、放射線治療と本当に頑張って治療してきましたが、神様は彼女の味方をしてくれませんでした。

 

私は扱う命の対象は違えど医療人です。

いわゆる3大療法が思うように成果が出ない場合、最終的にどうなってしまうのか予測はできました。

私は今の往診診療の中で様々な代替療法を取り入れていますが、そもそもの入口は彼女の力になりたいということからでした。

私は人の医者ではないですし身内でもありませんから、彼女の治療方針に口出しはできません。

ただ、もしも現代医療で打つ手がなくなったとき、それから何かを探しても間に合いませんから、できるだけ様々な知識を仕入れておいて、何か役に立てることがあれば、という思いで調べものを始めました。

末期がんの生還本から始まり、さまざまな代替療法や民間療法の一般書を読みあさりました。

そこで初めて、人の医療では統合医療という分野で、無資格の方が民間療法のレベルで世間から見るといわゆる”怪しい治療”を行っているのではなく、お医者様が自由診療の領域で”統合医療”と呼ばれるジャンルで様々な治療法を組み合わせて治療を行い、成果を上げているということを知りました。

 

彼女の病気が発覚した当時、私はまだ独立しておらず勤務医でした。

私の勤務していた動物病院は、ごくごく普通の1次診療をしている動物病院でした。

私はもともと昔から鍼灸治療には興味があって、院長にお願いして勉強させてもらい、細々と治療に取り入れてきましたが、それ以外の治療については獣医の教科書や専門書に書かれていることが中心で、そこに何の疑問もありませんでしたし、それ以外の治療の選択があるということを考えたこともありませんでした。

 

私が今の治療に頻繁に取り入れているオゾン療法は、実は往診開業当初は名前も知らない治療法で、彼女に役立つ治療を調べているうちに見つけて自分の中で強くヒットした治療法でした。

人では保険適用ではない自由診療の領域の治療はかなり費用がかかります。大学病院で通常の治療を受けていると担当の先生の理解も必要ですし、そのために別の病院に治療に通うよなるとなかなか代替療法を積極的に併用していくのはいろんな意味で難しいものです。

本で調べて良さそうだよと提案するより、実際に自分が使ってみて、イメージしているような効果が本当に出るのであれば、私が彼女に治療できるわけではないですが、彼女に提案するのに説得力がでるのでは、と思ったのでした。なのでそもそもの導入の動機は彼女のため、でした。

安全性も高く、治療対象の幅も広い。器械も大きくなく操作も簡便。

私は往診車で1人で動いていますから、1つの治療法に特化した器械を積んで動くのはスペース的に効率が悪い。本当に狙っているような様々な症例に効果が出るのであれば、自分にとっても強力な治療アイテムになります。

開業して半年弱で、売り上げなんて大したことない時期に、決して安くはない買い物でしたが、もともとピンときた直感力を信じるタイプなのと衝動買いは得意なので(?)。。。

ただ、当時は普通の一般診療の考え方が自分のベースでしたから、”様々な病名で使える治療”は、なんとなく”胡散臭い”と感じていたのも事実で、オゾンの器械の納入の時に『なんかオゾンって、調べれば調べるほど胡散臭いですよね~』と言ってしまい業者さんに苦笑され、その後会うたびに『山口先生はオゾンを買うときに”胡散臭い器械ですよねー”って言ったんですよ~』とからかわれました。

今では何度か発表させていただいたるほどオゾン療法は私にとってはなくてはならない治療のひとつになっているのですが。

 

オゾン療法を入口として代替医療に興味を持ち始めた私は、獣医の統合医療のセミナーを紹介してもらい、そこで初めて、獣医療でも教科書や専門書にはない様々な治療を組み合わせて治療効果を上げている統合医療を実践されている先生方が大勢いるということを知り、衝撃を受けました。

 

実はその彼女は勤務先の動物看護師で、自宅でもペットをたくさん飼っており、ちょうど高齢になって足取りが重くなってきたご自宅の大型犬の鍼灸治療で開業後からは定期的に往診していたものでしたから、そのワンコさんにもオゾンを含めた施術しながら、体調の変化を感じてもらったり、自分が診ている症例で効果が出た子の話をしたり、自分が知識を入れたさまざまな代替療法の話をしたりしました。

 

ようやく彼女がオゾン療法を取り入れてくれたのが2015年3月。

ただ時すでに遅し、幾度の手術と抗がん剤治療で体力の衰えが大きく、3回ほど通われたようでしたが、その後は通院する体力はなくなってしまいました。

 

毎年5月5日を迎えるとき、何か自分の思いを表現しようと思ってパソコンに向かうのですが、うまく書けず途中で破棄していました。

実はこのブログも昨日更新するつもりが、更新するかどうか悩んで1日遅れました。

12月以来、久々のブログ更新なのですが、実は、ブログを書けなくなっていたんですよね。

ごくごく普通の1次診療を何の疑問も感じず獣医師としてに十数年。往診診療を始めてもうすぐ4年。そんな中で代替療法を取り入れて3年半。

ドッグフードは万能食だと何の疑いもなかったいわゆる普通の獣医師の思考から、栄養のことを勉強して何かおかしいと疑問を持ち始めて2年。

特にここ1年くらいは自分の頭の中での医療というものの考え方への変革が大きく、どうしても現代医療に対して否定的というか、懐疑的になってしまい、何か書いてもとてもネガティブな感じになりそうだったんですよね。

もちろん、現代医療の恩恵は充分理解していますので、一般診療では通常の治療方法ベースに患者さんに提供しているのは今も変わりません。

獣医療でも高度医療や先進医療が発展していることで助かる命が増えている事実も充分に理解しています。

ただ往診診療は、今でこそ通常の一般診療の患者さんも増えてきましたが、患者さんの層は施設診療とは違い、超高齢だったり、様々な病気の末期の症例が多かったりとかなり独特です。

ご自宅ということや、飼い主様をお話をする時間が長いということもあり、診察台の上では聞くことのなかった飼い主様の本音、要望が聞けたりもします。

なんとなく人医療も獣医療も、進んでいこうとしている方向性や、医療人の考えていることと、患者が求めていることに何かズレがあるような気がしてきています。

なので、獣医療従事者の方にも、いろいろ悩んでいる飼い主様にもお伝えしたい、自分の思いが実は沢山あります。

 

彼女は私の往診診療をとても応援してくれており、もしも私がスタッフを必要とすることがあれば、彼女と一緒に仕事がしたい、と思えるほど私も信頼を寄せていました。

何十年後かに、私が空の上で彼女と再会できることがあれば、彼女に自信をもって、胸を張って自分のしてきた仕事のことを伝えたいと、3年前の葬儀の時に手を合わせてきました。

 

自分のイメージとして、動物病院のブログは飼い主さんにとってエビデンスの整っている有益な情報をお届けすべきかと思っていたので、なんだか自分の持論を唱えたり、エビデンスのはっきりしない情報をお伝えするのはいかがなものかと、更新できていないブログに悶々としていたのですが、ここで心機一転することにしました。

今後は体裁を整えることなく、カッコつけることもなく、『普通の動物のお医者さん』らしからぬ発言も増えるかもしれませんが、自分の病院のブログですし、書きたいように書いてみようかと思っています。

 

この時期は予防関係でお伺いするお宅が多く、なかなかパソコンに向かう時間が取れないのも事実なのですが、今後は、もう少しブログの更新頻度があげられるかな?と思います。

お楽しみに(?)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学会発表

年末は12月30日~1月3日までは休診となります。

 

なかなかブログを更新する時間が取れずで、少し前の話題になりますが、12月2.3日に、東京で比較統合医療学会という学会が開催されました。

比較統合医療学会というと、よくわからない学会名かもしれませんが、、鍼灸・漢方・サプリメントやそのほか様々な『補完医療』とか『代替医療』と呼ばれる領域の学会です。

実は私は今回、この学会で発表してきました。

内容は、”手作り食”です。

こんな食事がいいよ、という話ではなく、ドライフードから手作り食に切り替えた、とある患者さんの血液データや体調の変化など、10分ほどでまとめて話しました。

以前も書きましたが、私は大勢の前で発表するのがホントに嫌なのですが、発表するからには恥ずかしい発表にならないよう一生懸命資料を作り、頑張って10分話してきました。

 

知り合いの先生方には『緊張してたね~~~』と口々に言われるほど、テンパっていたと思うのですが、『先生の熱意はよく伝わってきたよ』とも言っていただいて、一安心できました。

 

発表の具体的な内容はさておき、発表の資料を作る中で皆さんにお伝えしたいこと、、というか、問題提起したいことがあって今回のブログを書いています。

 

犬は、もともとオオカミが祖先であるため肉食だったのですが、人間のそばで共同生活を送るようになり、雑食の性質を持ったということは、一般的に認知されています。

なので、雑食ではあるけれど、”肉食寄りの雑食”の生き物、と捉えることができます。

 

犬や猫のフードは、アメリカのAAFCOという基準に基づき日本でも基準を作り、その栄養基準を満たしているものを総合栄養食と呼び、それを食べていれば犬や猫の健康は維持できるという考え方の上になり立っています。

なので、フードのパッケージには保証分析値というものが記載されています。

”水分”というものがあるので、本当は少々計算の仕方が変わるのですが、ひとまずこの数値を足し算すると、17+13+4+7+10=51%

さて、残りの49%は何でしょう?

正解は炭水化物です。

炭水化物は表記の義務がないらしく、一般的に”粗繊維(食物繊維)”は表記されていても、炭水化物は書かれていません。

 

今回、私は、肉食中心の手作り食を指導し、米や小麦などの明らかな炭水化物は一切使わず、肉:野菜=70%:30%の重量比になるように食事指導しました。

(ほかにも手作り食にはコツはいろいろあるのですが、ここでは省きます)

その子がいままで食べていたドライフードと、完全に手作り食にしたときの栄養組成の違いです。

手作り食は、文部科学省のHPにある食品成分データベースを参考にして、

実際の一日分の食事の中の栄養組成を計算しました。

 

パワポのスライドの添付の仕方が分からず、PCの画面を写メっているので見にくいですが、円グラフの黄緑がタンパク質、青緑が脂質、青が灰分、紫が炭水化物です。

グラフ化するとすごくよくわかるのですが、ドライフード(このフードの場合)は食物繊維を合わせると60%以上が炭水化物です。

ほぼ肉、ちょっと野菜の手作り食生活でもタンパク質は50%。

 

タンパク質は、体の構成成分であり、筋肉、骨、血、皮膚、毛、さまざまな消化酵素、ホルモンすべて、その原材料はタンパク質がもとに作られます。

炭水化物はエネルギー源です。残念ながら炭水化物はエネルギー以外の用途にはならない、体内でタンパク質に変換されません、、、つまり、いくら食べでも血肉の材料にはなりません。

過剰な炭水化物は体内でストックするため、皮下脂肪となります。なので我々の皮下脂肪の原因は油ではなく糖質(炭水化物)なのです。

ビタミン・ミネラルなどの栄養をしっかり取らなきゃと、野菜やサプリメントを足し算する方は多いかと思いますが、

体を作る上では、タンパク質があって初めてビタミンやミネラルが働くことができます。

ビタミン・ミネラルだけで体は作れません。

 

皆さん、これをどう思いますか?

人の食事で、タンパク質2割、炭水化物6割のメニューってどんな感じか想像してみてください。

 

このドッグフードもいわゆる巷にあるプレミアムフードの種類で、決して安い粗悪なフードではありません。

当然、総合栄養食の基準を満たしています。

ドライフードに関しては、いろいろなメーカーをチェックしてみましたが、タンパク質が30%を超えるフードはとても少ないです。

おそらく、サクサク砕ける形でドラフード化しようと思うと、これが限界なのかな、と思います。

 

人の食事も、糖質制限から、玄米採食、食養生、マクロビオティックなど、様々な考え方があるように、

犬猫の食事についての考え方は本当に様々ですので、私が考えていることが正解かどうかはわかりませんが、

犬の祖先が肉食の生き物であるならば、ドライフードだけの食事では、絶対的にタンパク質が不足しているように思えてならないです。

 

猫を飼っている方も、普段のフードのパッケージを見ていただくと、さほど組成は変わりませんので、結構衝撃的だと思います。

猫は間違いなく本来は”肉食”の生き物・・・ですよね。

 

ちなみに、上記の理屈は人も同様です。人の体の構成成分はタンパク質です。

朝食:パンとコーヒーと果物

昼食:パスタとサラダ

おやつ:シュークリーム

夕食:カレーライスとサラダ

さて、タンパク質の割合はいかほどでしょう??

これで本当の意味での”健康な体”が作れるのかな、って思います。

 

ペットだけでなく、ご自身の食について再考するきっかけになっていただければ幸いです。

食と栄養の話は書きだすと止まらなくなるので、今後も少しずつ自分の考えをお伝えしていければと思います。